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2000年5月

しつける

2000年5月号

『しつける』  中舘 慈子

しつけは「仕付け」または「躾」と書きます。
広辞苑(第4版)を試しに引いてみると①作りつけること②礼儀作法を身につけさせること。また、身についた礼儀作法。③嫁入り。奉公。④縫い目を正しく整えるために仮にざっと縫い付けておくこと。⑤田植え。となっていました。

なんと、今失われたものの多いことでしょう!!①の使い方をすることは少なく、既製品を買うことが主流になった今、④をすることも無い。⑤は、一部の地域の方がかかわっていることです。③の「嫁入り」「奉公」も死語となり、姑の嫁いびりとか使用人の奉公人いじめなどがなくなって、だれもが平等に生きられる時代になったことは、幸せだと思います。

「しつけ」ということばから、私たちがまず思い浮かべるのは「子どもをしつける」という意味の「しつけ」ですが、これは強いて言えば②に入るのでしょうか。「礼儀作法」を、人として生きていくために必要なマナー、人間関係を円滑に行うためのルール、と拡大解釈すれば、当てはまる気がします。

文部省が1999年12月、日本韓国アメリカイギリスドイツの小学校5年生、中学2年生を対象に行った調査によると「日本の親は海外の親に比べてしつけをしない」という結果が出たそうです。

たとえば、父親・母親から「うそをつかないように」と言われない子どもが約80%。これが韓国アメリカイギリスでは20%から30%、ドイツでは少し高くて約40%です。逆によく言われる子どもは日本では10%代だということです。「弱いものいじめをしてはいけない」「友達と仲良くしなさい」についても同じような結果だそうです。

また、家事の手伝いも日本の子どもはほとんどしておらず、「いつも手伝う」子どもは、洗濯が6%、買い物7%、掃除が9%。なんとも寂しい現状です。
どこの国でも日本に比べれば、自分の子どもに責任を持って行っている「しつけ」が、日本では失われてきているのです。かつてあったはずの「身を美しくする」しつけが・・・。

唐突な発想かもしれませんが、日本イタリアドイツの出生率が低くなってきていることとも関連して、第二次世界大戦の敗戦による大人世代の自信喪失が、子ども、孫に引き継がれているのではないかとふと考えました。

大人が、子どもに「人として生きていくために必要なマナー」「人間関係を円滑に行うためのルール」である「礼儀作法(しつけ)」を教えることのできる「自信」を回復することが、まず必要なのではないかとつくづく思うのです。