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2000年6月

バギーの中の赤ちゃん

2000 年6 月号

『バギーの中の赤ちゃん』  中舘 慈子

友人が目をくるくるさせながら言いました。
「レストランに行ったらね、バギーに赤ちゃんを乗せたお母さんたちが大勢で食事をしていたのよ。そこでびっくりしたんだけれど、赤ちゃんたちがおとなしいのよね。みんな黙って座っているの!!」

「へえー・・・。うちの子たちなんかバギーの上に立ったり、何とか逃げ出そうとしたり、危ないし目が離せなかったわ。(みんな女の子です)」
「そうでしょう?うちもそうだったから、とても一緒に連れて行ってゆっくり食事なんかできなかったわ。でも、どうしてこんなにおとなしくてお行儀よくなったのかしらね?」
「・・・・・・・?車でもチャイルドシートに一人で座っておとなしくしているのでしょうね。」

電車の中でも、バギーに乗っておとなしくしている赤ちゃんの姿をよく見ます。でも、ただおとなしくしているだけなのでしょうか。

関西の私鉄に乗ったときです。6ヶ月くらいの男の子がバギーにおとなしく座っていました。ママはお友達と話に夢中。男の子はじっとつり革を見つめ始めました。じっとじっと見ています。目がらんらんと光っています。・・・突然、面白いことが始まりました。男の子が急に首を降り始めたのです。ゆれているつり革に合わせて・・・。にこにこしながら、男の子は左右に首を振り続けます。ふりこのように・・・。ママは、ずっとこの様子に気づかずに、お友達とお話をしていました。

東京の地下鉄に乗ったときです。8ヶ月くらいの女の子がバギーに乗ってもぞもぞ動いています。何かしたくてたまらない様子です。よく見ると小さな手にバギーの前についているベルトを握っています。口を尖らせてはめようとしているのです。なかなかうまくいきません。あまりもぞもぞしている様子に、ママが抱っこしようとするとそっくり返って「いやいや」。仕方なくバギーに乗せるとご機嫌が直って、また、ベルトはめに挑戦を始めます。ママは、やはりお友達との話がはずんでいて、女の子が何に夢中になっているのかということには、気づいていないようでした。

おとなしすぎるバギーの中の赤ちゃんの一団。ちょっと気になる光景です。今の赤ちゃんたちが急にお行儀がよくなったとは思えません。ママに呼びかけても答えてもらえないと、あきらめているとしたら問題です。この時期は、赤ちゃんの呼びかけに答えてあげることが大切な時期ですから。

一度出会ってみたいものです。赤ちゃんたちが実はひそかに何かに夢中になって遊んでいてくれればよいと願いながら・・・。

そして、赤ちゃんと二人だけのときは、ママがしっかりと赤ちゃんと遊んであげているからこそ、バギーの中では赤ちゃんがおとなしいのではないかということを期待しながら。