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2001年4月

秘密の顔

2001 年4 月号

『秘密の顔』 中舘 慈子

「ぜったいママやパパにないしょだよ。」
お子様とこんなひみつを持つとき、シッターさんは悩みます。たとえば、ママやパパの誕生日にプレゼントを作るとか、庭のすみにちょうちょのお墓を作ったというようなかわいいひみつなら悩みません。
帰り道に、ママやパパに言われた道と違う道をとおってみたいというとき、暑い日にいつもだめと言われているアイスクリームを食べたいと言われたとき、これはそっとママやパパに相談してみれば良いことですね。
ちょっと悩んでしまうのは、シッターに見せる「良い子ではない」顔を絶対にママやパパに内緒にしてほしいと言われるときです。
「もし、話したらあばれちゃうぞ。」「話したらこれからシッターさんのいうことなんか 絶対に聞かないからね。」これが生命の危険に関わるほどのことでしたら、お子様になんと言われてもご両親に話さなければいけません。
たとえば、道を歩くときにシッターと手をつなぎたがらないお子さんがいたとします。歩道のない道、トラックもビュンビュン走っています。「ご両親から手をつなぐように話していただけますか?」と言われたご両親、くれぐれも「シッターさんに言われたけども、手をつながなければだめじゃないか!」と怒鳴ったりしないでくださいね。「あなたの命に関わることだから、あなたが大事だから、道を歩くときはシッターさんと手をつなぎましょうね。」とやさしく話してください。
これが、たとえば次のようなことだともっと悩むのです。シッターに対して傷つける言葉を言う、シッターを使用人としてあしらう、制止を聞かずにわざと悪さをする など。そしてそのことを絶対にママやパパに言わないでね、といわれたとき。
ケースによるでしょう。ひみつのまま、お子様の心が癒され、そんな顔が消えればそれも良いと思います。もしも、シッターが思い余ってご両親にそっとご相談したときは、どうかお子様を頭ごなしにしからないでください。
子どもには「良い子ではない」顔を、大好きなご両親に見せたくないと言う気持ちがあるのです。だから、そんなひみつの顔をご両親に知られたくないと思うのですね。
ひみつの顔を知ったとき、まず、「良い子ではない」行動の裏にある気持ち、不安・寂しさ・疲労などを察してあげるようにしてください。下のお子様にかかりっきりではありませんか? ご家族の関係がぎくしゃくしていませんか? ご両親がいそがしすぎませんか?集団生活が長すぎませんか? 学校・幼稚園など新しい環境に入る不安はありませんか?
ひみつの顔は、こんな気持ちを表すお子様のメッセージかもしれません。そして、いつも「良い子」ではなくてもお子様の存在そのものがすべてご両親に受け止められ、信じられていることをぜひお子様に伝えてください。
大きくなって少し道を外れそうになったときも「母は 父は 自分のことを無条件に信じて待っていてくれている」と思うことが、人生の軌道を直す上で計り知れないほど大きな力になるでしょうから。