ホーム>子育てエッセイ>2001年8月

2001年8月

暑い夏

2001年8月号

『暑い夏』 中舘 慈子

どうしたのでしょうか! 今年は7月初めから猛暑が続いています。カラカラの土にかろうじてつるを伸ばしている朝顔には、花がまだ咲きません。本社のある新宿新都心も道路の照り返しとビルから排出されるクーラーの熱で、むせるよう。小さい子ども達は、地面に近いところに頭があるわけですから、40度を越えるような熱地獄にさらされるのではないかと心配です。一方、親がパチンコに興じている間に、車の中で熱に苦しみながら尊い命を無くす気の毒なお子様が今年こそ出ないようにと、祈るばかりです。どうしても、大人の用事で出かけなければならない、リフレッシュをしたい、こんなときには、ぜひベビーシッターなどを利用して涼しい家の中で子ども達が過ごせるようにしていただきたいと思います。
明石の花火見物の雑踏でいくつもの幼い命が消えました。よその子どもを救っている間にわが子を失った父親、子どもを気遣いながら亡くなった高齢の方がいらっしゃった反面、なぜ弱い子どもを多くの人が踏み潰していったのかと、怒りが込み上げます。もちろん、それ以前に混雑にたいする安全対策が十分になされていなかったことへの責任が問われるべきですが・・・。子どもに花火を見せたい、という思いが悲しい結果になりました。遠回りしても雑踏は避けたいものですね。
夏は水の事故も多いとき。子どもは15センチの水溜りでも命を落とすと言われています。顔が水に浸るとパニックになって、水を肺まで吸い込んでしまうこともあるとのこと。ちょっと目を離したときにビニールプールで命を失うこともあるということです。くれぐれもご用心くださいますよう。
ここで少し昔の子どものお話を。日本では平安時代の貴族階級の子どもから明治時代の庶民の子どもに至るまで、一糸まとわぬ裸ん坊が大勢いたということが、絵巻作品(「扇面法華経」など)から分かるそうです。
また、1878年 外国女性として最初に東北地方を旅行したイサベラ=バードの『日本奥地紀行』には幼い男子は何も着ていなかった。大人でも男子はふんどしだけしか身につけておらず、女子は腰まで肌をさらしており・・・・・幼い子ども達は首からお守り袋をかけたままの裸姿である・・・と、述べてあるそうです。
日本の子どもが裸ん坊だった一つの理由は江戸中期の京都の医者 香月牛山が育児全書「小児必用養育草」のなかで「小児は熱つよき(体温が高い)ものなれ
ば、ねつをつつみこめ」てはならない。「衣を重ねて温むべからず、温むれば汗出やすく、汗出れば皮膚弱くなりて風を引きやすきなり、常に衣を薄くすべし」と、述べているとおり、体温が高いので重ね着をさせなかったと言うことが考えられます。
もう一つは、日本の夏の気候が高温多湿だから、薄着か裸のままでいたと言う理由も考えられるそうです。
クーラーも扇風機も無い昔の夏、多くの子ども達は裸ん坊で夏をしのいだでしょう。今年は21世紀初めての夏。子ども達にとって少しでも過ごしやすいものとなるように大人が工夫をこらしてあげたいものですね。

参考文献 上 笙一郎著「日本子育て物語」筑摩書房