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2002年1月

梅干と出生率

2002年1月号

『梅干と出生率』  中舘 慈子

おいしい梅干だと思っていた。果肉が厚くてやわらかく、甘い中にほどよい酸味があり、塩っ辛さを感じない。フルーティで、従来のしわしわの梅干とはまったく異なった「果実」という印象だった。和歌山県日高郡南部川村産のものである。この村では、農業高校で何十年もの品種改良を重ねて、実が大きくて肉厚で種の小さい南高梅という種類を作り出した。この名前は農業高校の名前にちなんでつけられたという。さらにはちみつを加えるなどして今のおいしい梅干の加工方法を工夫したという。
努力の結晶であるおいしい梅干のおかげで、村の個人所得は高くなった。そしてこの村の出生率は近県に比べても高いものになっているという。「おいしい梅干が売れれば、出生率が高くなる」というとこじつけめいた感じもするが、所得水準が上がることが何かしら未来への夢を駆り立て、生活の余裕につながり、出生率向上につながっているのではないかと分析するテレビ番組を見て、なるほどとうなずいた。
それだけではないだろう。村には豊かな自然がある。子供が走り回ることのできる広い自然が広がっている。夫婦は共に同じ産業を支える仕事に従事しているだろうから、絆も深いかもしれない。子育て援助者世代(祖父母)が同居している可能性もある。出生率の向上が短絡的にすべて梅干とつながるとはもちろん思わない。けれども新春早々の「梅干と出生率」の話題は何かほほえましくて興味をそそられた。
目黒区の出生率は0.8であるという。日々著しい変化を遂げる情報化社会は、働く女性が育児休業を取る決意さえ鈍らせるのかもしれない。都会は、人が自然の一部であることを忘れさせる。梅干は自然の賜物である。都会の出生率を上げることにつながる「梅干」のようなもの、都会に住む人に人が自然の一部であることを思い出させる「梅干」に相当するものはないだろうか。そんなとりとめのないことを考えながら、南部川村産の梅干を味わう。もっとも、半額近い価格で中国産の南高梅で作ったかなりおいしい梅干が出回り始めたということだ。倍額でもよい。私は南部川村産の梅干を求め、2002 年、未来を担う子供の誕生を願ってみようか、と思う。
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