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2003年3月

「次世代育成支援」と「育児保険」への願い

2003年3月号

『「次世代育成支援」と「育児保険」への願い』  中舘 慈子

1 日本の社会保障は高齢者に偏っている

「育児保険」という保険を聞いたことはありますか? ほとんどの方がまだ聞いたことがないと思います。今の時代を築いてきてくださった高齢者の方々に対する「介護保険」はあっても、次の時代を作っていく子どもたちに対する保険はまだ存在しませんから。実は日本ほど社会保障が高齢者に偏った国は珍しいのです。例えば、平成11年度の社会保障給付を見ると、高齢者に対する年金は33.6兆円 育児など家族に対する給付(児童手当・児童扶養手当など・児童福祉サービス・育児休業給付・出産関係費)は2.0兆円、%でみると44.8%:2.7%です。また、対象者別に見ると高齢者関係対児童関係は50.4兆円:2.5兆円、社会保障給付費に占める%は67.1%:2.5%となります。一方、児童・家庭関係給付費はスエーデンでは10.5%、ドイツでは9.0%となっています。

2 今、次世代育成支援が必要である

このように日本は、子育て家庭が支援されているとは言えない社会です。さらに、認可保育所利用者と在宅育児世帯の公費の恩恵の差については、近年まで表面化しませんでした。たとえば0歳から2歳の子どもを家庭だけで育てているお母さんは数多いのですが、組織や団体に属さないので声があげにくく、また子育てで手一杯のため、矛盾を感じながらも声をあげる余裕さえなかったのです。父親だけの給与の中で、公費の恩恵を受けることもなく、やりくりをしながら家庭で子育てをしてきたお母さんがたくさんいました。今、少子社会に歯止めをかけるためには、発想の転換が必要です。それには社会全体で未来を担う次世代を支援していく必要があります。次世代を育むのは、すべての子育て家庭です。母親が就労している家庭も母親が子育てに専念している家庭も社会が支援をする必要があると思います。子育ては母親のみ、一つの家庭のみで全責任を負うことができるほど生易しいものではありません。すべての家庭の子育てを社会全体で支援していくことが必要なのです。たとえば、ベビーシッターはすべての子育て中の家庭に必要なサービスです。けれども原則として一対一で行なう保育ですから、他の保育に比べて「料金が高い」という現実があります。0歳児を認可保育所に預ける場合、月に数十万円の公費の補助があります。しかし、ベビーシッターを利用する場合は、1日1回1500円の割引券があるだけで、割引券を利用できる人も限られています。

3 育児保険制度試案

ここで一つの提案があります。それが「育児保険制度」なのです。山崎泰彦先生、鈴木眞理子先生等を中心とした厚生科学推進研究事業「社会保障制度の枠内での少子化対策に効果的育児支援」研究事業(通称「育児保険研究会」)に私も平成12年度から2年間、研究協力者として関わりました。今育児保険制度のイメージとして次の3つのモデルが考えられています。

① サービス中心の地域保険モデル:保育等のサービスを中心に、かつ地域特性に十分に配慮した支援を進める観点から考えられる介護保険のような市町村を保険者とする地域保険型の制度。

② 現金給付中心の国民保険モデル:出産関連費用や児童養育費の軽減のための現金給付に重点を置き、かつ全国一律の支援を進める観点から考えられる年金保険のような国を保険者とする国民保険型の制度。

③ 綜合保険モデル:育児支援を一元的に進めるという観点から考えられる、両者の要素を一体化し各種のサービスと現金給付を包括的に提供する綜合保険型の制度。
この場合、財源としては、現役世代が「保険料(育児支援負担金)」を納め、それに租税負担や事業主負担を加える必要があります。
一方、国民の新たな保険料負担はなく、現在の国と地方自治体の財源などをもとにして、次のような育児保険給付が可能であると試算できます。対象は日本中のすべての子ども達です。

0~1歳児 月5万円
2~3歳児 月3万円
4~5歳児 月2万円 の育児支援クーポンが給付されます。

このクーポンは、保育所 幼稚園 ベビーシッターなど都道府県が