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2003年11月

妊婦マーク

2003年11月号

『妊婦マーク』中舘慈子

妊娠初期の彼女が、目を潤ませながら言いました。
「今日、すごく良いことがあったんですよ。いつものように妊婦マークをつけて優先席の前に立っていたら、30歳半ばくらいの女の人が、にっこりしながら『どうぞ』って譲ってくれたんです。もう涙が出るほど嬉しくて何度も『ありがとうございます』って言ってしまいました。すごくきれいな笑顔が忘れられなくて、思わずその人に良いことがありますようにって祈っちゃったんです。」
聞けば、妊娠3か月なのでもちろんおなかは目立たず、つわりの真っ最中。満員電車で立ちっぱなしで通う毎日で、会社に着く頃はいつもくたくただそうです。「妊婦マーク」をつけて優先席の前に立っても、足を大きく開いて漫画を読んでいる男子学生、ちらりと見ても酒くさい息をしながら目をつぶってしまう男性など、今まで誰一人席を譲ってくれなかったそうです。
「妊婦マーク」を見せてもらいました。ネットで手に入れたというマークは、丸くて白地に赤で女性のおなかの中に赤ちゃんのいるイラストが描かれ、“BABYinME”と書いてありました。
妊娠初期は特にからだが不安定で、妊婦にとってつらいときです。つわりも「身体を大切に」という赤ちゃんからのメッセージかもしれません。このような時期だから、社会で妊婦をサポートしなければならないのではないでしょうか。次世代育成支援の最初のステップは、妊娠初期の妊婦の保護ではないかと思いました。
それにしても「妊婦マーク」、私も実は初めて見ました。まだまだ一般に知られていないと思うので、もっと「妊婦マーク」の存在をアピールする必要がありそうです。
これから優先席の前で「妊婦マーク」の人を見たら、ぜひ席を譲ってあげてください。