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2004年5月

わすれたうた(童謡)を思い出す

2004年5月第2号

『わすれたうた(童謡)を思い出す』 中舘慈子

5月の連休にウィーン少年合唱団の演奏を聴きました。23人と小編成でしたが、天使の歌声に癒されました。特に印象に残ったのはアンコールで歌われた「赤とんぼ」(作詞三木露風作曲山田耕筰)。ソロはあくまでも透き通っていて、日本人の忘れ去った童心を抒情的に歌い上げ、思わず涙ぐむ聴衆もいました。

その数日後に、テレビで「うたをわすれたカナリア」のうたが、西条八十によって日本で最初の童謡として作られたことが放映されました。『現在世間に流行している俗悪な子どもの読み物と貧弱低劣なる子どもの謡と音楽を排除して、彼らの真純な感情を保全開発するために、現代第一流の作家詩人、作曲家の誠実な努力を集める』ことをモットーに「赤い鳥」を発刊した鈴木三重
吉の依頼によるものです。90過ぎた方たちがこの唄を初めて歌ったことを懐かしそうに語っていました。

『赤い鳥の謡は、いづれもわれわれの第一流の作家が、最近の詩壇に一境地を区劃した傑作のみで、そのあるものの如きは直ちに、優れたる古典として永久の生命に輝くべき絶唱とさへいはれている。その作曲も悉く、1人の年若き天才の代表的作篇として推服された名作である』

と、三重吉は当時の広告文で述べています。国境を越えた童謡が戻ってきて、日本人の心に「わすれたうた」を思い出させてくれたような気がします。北原白秋・西条八十・三木露風などによって、古典としての永久の命を吹き込まれた優れた童謡を歌っていると、自然や動物がそーっと心に忍び込んで優しい気持ちになれるような気がします。お子様を抱いて、静かにゆったりとした気持ちでわすれていたうた(童謡)を歌ってみませんか?

「ゆりかごの唄」

1 ゆりかごのうたをカナリアがうたうよねんねこねんねこねんねこよ

2 ゆりかごのうえにびわの実がゆれるよねんねこねんねこねんねこよ

3 ゆりかごのつなを木ねずみがゆするよねんねこねんねこねんねこよ

4 ゆりかごの夢に黄色い月がかかるよねんねこねんねこねんねこよ

大正10年8月(1921年)『小学女生』作詞北原白秋作曲草川信
(著作権切れの作品)

本当の自由って?

2004年5月第1号

『本当の自由って?』 中舘慈子

こんなことがありました。

シッティングにうかがっていたときのことです。小学生の妹さんがお手伝いをしてお味噌汁を運んでいたところ、お兄さんが突然ふりかえりぶつかってしまい、妹さんの手にお味噌汁がかかってやけどをしてしまったのです。シッターはあわてて妹さんの手を冷やし、幸い痕は残りませんでした。シッターから緊急連絡を受けたので、お母様にお詫びの電話をしました。するとお母様は「これは子どもたちの問題です。前後を通る時には必ず声をかけるように話していたのを守らなかったからです。以前兄が遊具で大怪我をしたときにも、誘った友達の責任や先生の責任ではなく、乗った本人の責任だとしかりました。それが我が家のルールです。」ときっぱりおっしゃいました。もちろんシッティング中の事故はお子様の安全をお預かりしているシッターと会社の責任です。しかし、お子様にこのような自己責任の教育をしているご家庭の姿勢に感動しました。またこのような教育を通じて危機管理能力も培われていくのだと思います。危機管理能力は人に本能としてあるものではありません。特に親や大人の庇護の元にある時期にしっかりと子どもたちに植え付けていきたい力です。

日本の高校生は、米国、中国、韓国の高校生に比べて、自分中心に物事を考える一方で、責任を負うことには消極的な傾向が著しいことが、文部科学省所管の財団法人、日本青少年研究所と一ツ橋文芸教育振興会が、日米中韓の四カ国の高校生に行った生活・意識調査で分かりました。

たとえば、「親に反抗すること」は「本人の自由」(55%)。「悪いことではない」(22%)
とともに突出して高く、逆に「良くないこと」は5人に1人のみで、四カ国で唯一、過半数を割り込みました。「偉くなると責任が大きくなるからいやだ」という問いに、「そう思う」と答えたのは日本が55.6%で、唯一、過半数を上回りました。「スーパーやコンビニでの万引」「覚醒剤や麻薬の使用」「売春など性の売り買い」といった設問も、「本人の自由」としたのは米国に続き、他の二カ国を大きく引き離しました。

反抗はするけれど責任は負わない、自由に行動するけれども責任転嫁する、大切な自分の体を守る危機管理能力のない日本の高校生を育ててしまったのは、その親や社会による教育の結果ではないでしょうか。

ご家庭と連携しながら、年齢の低いころからお子様に対して「自由」には必ず自己責任が伴うことを教え、自分を守る危機管理能力を養うことが、私たち保育や教育に関わる大人の責任であるような気がします。

代表取締役中舘慈子(教育心理学会会員)