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2006年8月

現代の忙しいおばあちゃん

2006 年 8月号

『現代の忙しいおばあちゃん』

浅田志津子(教育・福祉関係のルポライター)

先週から、7か月になる娘を連れて、伊豆の実家に帰省している。出産前は、実家に帰省した時は娘の世話は親(母)に押しつけて、私は観劇やエステに行ったり、こころゆくまで惰眠をむさぼるつもりだったのだが、現実はそうもいかない。親も、けっこう忙しいのだ。仕事をしているわけでもないのに、である。父の定年後、両親は伊豆の山奥に引っ越し、念願の田舎暮らしをはじめた。畑仕事と、やたらと広い庭の植物の手入れで、父も母も、日中は家の外にいる時間が多い。だから、結局、私と娘が家に二人きりで、のんびり昼寝もできない。その上、陶芸やコーラス、ハーブ栽培など、趣味の活動でしょっちゅう外出する。孫が来ているときくらい、趣味の活動を少しは休んでもよさそうなものだが、「今月は窯炊き当番だから」とか、「発表会前で練習を休めないから」とか言いながら、出かけていく。...まぁ、食事の支度だけは母がしてくれるので、ありがたいと思うことにしているが、当初は少し不満であった。

もちろん、両親は孫である娘のことを大層いとおしみ、かわいがっている。娘をだっこしてあやしているときの親の表情は、「慈愛」という文字を絵にしたようで写真に撮りたくなるほどだ。けれど、親にとっては孫のいとおしさと、自分の生活を変えてまで孫の世話をするのとは、まったく別次元のことなのだと、最近になって思えるようになった。親には親の日常があり、すべきことや、やりたいことがいっぱいある。それらをすべて後回しにして、孫の相手を優先することを親に期待するのは私のワガママなのだろう。実際、「期待していたほど、親が子どもを預かってくれない」と友人もこぼしている。私の親に限らず、現代のおばあちゃんは皆、忙しいのだ。

昨日は、昼過ぎにぐずる娘の添い寝をしながら、いつのまにか寝てしまった。
夕方、起きて窓を見たら、コーラスから帰宅した母が、夕暮れの庭の水まきをしている姿が見えた。庭の木々も、畑の作物も、背景の山々も夕焼けで光っている。こんなに美しい、自然豊かな「田舎」を私と娘にあたえてくれただけでも、親に感謝すべきなのだろう。

赤ちゃん連れ新幹線の旅

2006 年 8月号

『 赤ちゃん連れ新幹線の旅 』

浅田志津子(教育・福祉関係のルポライター)

先日、6ヶ月の娘をA型ベビーカーに乗せて、新幹線で福島から戻ってきた。これまでベビーカーでの長い電車旅は、いつも夫がいっしょで、私ひとりははじめてだった。結果、予想以上に大変で、たくさんの人々のお世話になって無事に帰宅したので、そのことを書こうと思う。

まず、乗りこんだ新幹線の車両が 2 階建てだった(涙)...。カーブした狭い階段を降りなければならず、発車後数分、デッキでどうすべきか考え、結局、まず娘をだっこして降りた。座席に娘を寝かせ、近くに座る40代くらいの背広の男性に、デッキからベビーカーを降ろす間、赤ちゃんが椅子から落ちないよう、押さえていてくれませんかと、おずおずお願いする。男性は一瞬驚いたが、すぐに「いいですよ」と答え、ごつごつした大きな手で、娘のぽちゃぽちゃの体を押さえてくれた。急いでデッキに戻り、折りたたんだベビーカを抱えて階段を降り、席に戻ったら、フギャフギャむずがる娘を男性が非常に不器用にあやしてくれていて、じ~んときた。

宇都宮あたりでトイレに行きたくなったが、あと30分だからとガマンする。大宮で降りるさい、前述の男性はもう下車してしまっていたため、近くに座る別の50代くらいの男性に、また、おずおずお願いし、ベビーカーをデッキに上げている間、赤ちゃんを押さえていてもらった。

京浜東北線に乗り換え、ようやく最寄駅につき、やれやれと思ったが、この駅はのぼりのエスカレーターしかないことを思い出し、「はぁ...」とため息をつく。しばらく考え、結局、ベビーカーを改札の隅に置き、娘をだっこして階段を降り、娘をだっこしていてくれそうな女性をキョロキョロと探した。幸い、いかにも待ち合わせ中の20代後半くらいの女性がいて、おそるおそるお願いしたところ、「いいですよ~」と笑顔で娘を抱きとめてくれた。うれしかった。急いでベビーカーを抱えて降りたら、その女性が同世代の男性と親しげに話している。たぶん、待ち合わせしていた相手だろう。二人共、娘をあやしながら楽しげに笑っている。「...ありがとうございました。すごく助かりました」。お礼を言って娘を受け取り、べビーカーに寝かせている間、男性が「ほんと、超かわいいよなぁ」と言い、女性がしみじみしたまなざしで「うん」と言った。
お辞儀をして、たがいに背を向けた後、「俺らも産むか?」と冗談ぽく言う男性の声と、女性の笑い声が聞こえた。その会話のつづきが、今も気になっている。もしや、うちのおでぶ娘があの二人のゴールインに一役買ったかも知れず...。

※浅田さんの周りには、善意の方が集ってくるのですね。お子様を見ず知らずの人に預けざるを得ない場合は、慎重に人を選ぶようにしてください。(中舘)

バンビーノ子育て相談シリーズ 1 「双子の男の子」

2006 年 8月号

『バンビーノ子育て相談シリーズ  1  「双子の男の子」』

回答者  中舘  慈子

Q .
2歳半の双子の男の子です。A くんは乱暴で B くんのものをすぐにとっては泣かせてしまいます。ついつい A くんばかりしかってしまいます。A くんに言い返したり取り替えしたりできなくていつも泣かされている B くんがかわいそうでかばうのですが、すぐにおんぶをせがみます。
一日中  けんかとおんぶで、へとへと。食事作りに手間をかける時間もありません。どうしたらよいでしょう?

A.
双子は泣くのも一緒。ミルクも一緒。お母さま、2歳半になるまで双子の男の子をほんとうによく育ててこられましたね。けんかとおんぶでへとへと・・・  がんばっているお母さまの様子がよくわかります。
2歳半はちょうど自我が出てきて「じぶんのしたいこと」「いやなこと」がはっきりしてきますが、ことばでうまく伝えられません。昔は「反抗期」ということばがありましたが、今は「自立期」すなわち、自分の意思がしっかりとできて自立に向かう時期とポジティブに捉えたいと思います。

とはいうものの、2歳半はまだまだお母さまが心の安全基地。A くんも B くんもお母さんにたくさん愛して欲しい、たくさん認めて欲しい  と思っています。乱暴に思われる A くんは、おんぶしてもらっている B くんがうらやましいのかも
しれません。A くんが何か良いことをしたときには、うんとほめてぎゅーっと抱きしめてあげてください。逆に B くんには「いや」ということをことばで言えるように伝えてみてください。
けんかはお母さまの愛情のとりあいっこかもしれませんよ。

食事作りは大変だとは思いますが、半製品を使ったり、お子様の寝ている間に作ったものを冷凍しておいたりするなど、ぜひ工夫してみてください。こんなにもてもてお母さまなのも今のうち。いつかそれぞれの世界に飛び立って
いってしまいますよ。時にはベビーシッターに預けたりしてリフレッシュしながら、もてもてお母さまの時間を楽しんでください。