ホーム>子育てエッセイ>2007年5月

2007年5月

在宅ワークママの決心

2007 年5月号

『在宅ワークママの決心』

浅田志津子(教育・福祉関係のルポライター)

1歳3か月の娘がとうとう歩き始めた。ぽてぽてと二足歩行する娘は太っちょペンギンそのものである。生まれたときは、顔にかかったタオルを払うこともできずに泣き叫んでいたのに、子どもって確実に成長していくんだなぁ...としみじみしたのは、歩き始めた最初の数時間だけであった。自由になった両手で、あらゆるものをつかんでは投げ、また、別の場所に移動し、つかんでは投げ、の繰り返しである。数日前から、台所や戸棚の扉を開けられるようになってしまい、事態はより深刻になってきた。

夫も私も、それぞれの仕事部屋は、大切な書類や資料、画材などが山積みなので、これまで娘はいれないようにしてきた。だが、最近はさすがに目が離せないので、私の仕事部屋に娘をいれて仕事することになった。恐れていたとおり、30分で大地震の後のような状態になる。

先日、いつものごとく「なに、やってるのっ!」という私の怒声と、手にしたボイスレコーダーをとりあげられて、「ギャア~!!」と泣き叫ぶ娘の声に、とうとう夫が私の仕事部屋にやってきて「うるさすぎて、絵が描けない...」とため息まじりに言った。

「さっちゃんに言って」と口をとがらせると、「さっちゃんより、君の声のほうがうるさい...」と夫。その言葉に私が深くキズつき、それ以上にムッとしたのは言うまでもない。「だったら、パパが見てよっ」という言葉をなんとか飲みこんだのは、もし娘が夫の部屋で水さしをひっくりかえして絵を汚しでもしたら、大損害になるからだ。私達のシリアスな雰囲気を敏感に察してか、娘が「ひっく、ひっく」と泣き始める。結局、私がため息と共に仕事を中断し、夜、娘が寝てから、深夜3時まで仕事した。

在宅ワークは、ともするとダラダラと慢性的に「仕事モード」になってしまう。子どもにしてみたら、親はそばにいるのに、いつも相手をしてもらえないわけで、ストレスや不満が募るとも言える。でも、まだ保育園へ預ける気にはなれない。いろいろ考えた結果、ダラダラ仕事モードを防ぐために「夜、娘が寝た後の4時間と、お昼寝中の2時間を「お仕事タイム」として集中し、それ以外は極力パソコンに向かわない」と紙に書いて壁に貼った。まずは、娘を夜9時には寝かしつけることから、はじめることにしよう。

子どもを預けること

2007 年5月号

『子どもを預けること』 中舘  慈子

もうすぐ 3 歳になる孫がやってきた。大人たちを前に、ご機嫌なAくんは、大きな声で言った。
「乳児集会をしま~~す。」
「ええつ!?  乳児?」
「そう。0・1・2 歳児さんは乳児なの。」と、ママの声。
4 月に 2 歳だったAくんは、あと 1 年間は乳児さんということらしい。
エプロンシアターが始まった。
「先生のほうを見てくださ~~い。」
エプロン代わりのポケットから、トーマスやらゴードンを切り抜いたものを後ろ向きにしたもの(真っ黒な影絵のようになっている)・・・・が、次々と出てきて、それが何であるかを当てていくのである。ああ・・・!  私には全然わからない。Aくんは、あきらめたのか、 「これはマードック  これはスペンサー  これは・・・だよ~。」と説明してくれた。

Aくんは0歳のときから保育園に通っている。母乳で育てられた甘えん坊さんは、最初の 1 ヶ月くらいは誰よりも大きな声で一日中泣いていたようだ。そんなときに先生が電車の見えるところまで連れて行くと、ふっと泣き止んだそうだ。最初のことばが「デンチャ」であり、今でも電車が大好きである。 うずらぐみさんからあひるぐみさんに進級して、
「今は  何組さん?」
「えっとね~~。ぺんぎんぐみさんだよ~~。」
お友達もいっぱい。名前も次々に出てくる。休日には家族ぐるみでお食事に、テーマパークにお出かけをしているようだ。

パパとママが、「ちょっとお仕事に行ってくるね。」と出かけた。 「パパとママは、会社に行ってお仕事をするんだよ。お仕事に行くと、ちょっとさみしいなあ。でも、Aくんは、パパとママ  いちばん  だ~~~いすき!」 おばあちゃんは、パパやママにとうていかなわない。 子どもを預けることにはいろいろな考えがあると思う。 私の母は、「子どもはお母さんが家庭で育てるのがいちばん。0 歳から集団に預けるのはかわいそう。」と考えている。

専業母親で、サポートしてくれる人のいない地方で 3 人の年子の子育てをした私は、 「0 歳から保育所やベビーシッターに預けながら、両親が仕事を続けていくことに賛成!  ほどよく仕事をしながら人に預けることも必要。」という考え方である。 親子の絆はいつも一緒にいることだけではないと思う。十分に配慮することで 0歳から保育所やベビーシッターに預けたとしても、親子のアタッチメントの形成は十分にできると思う。 それぞれの家庭が、さまざまな考え方や要因によって、子育ての方法を考えていると思う。どんな方法であっても、子どもが「両親に愛されている」「人に愛されている」ことを実感し、「両親を信頼する」「人を信頼する」ことに結びつくことが、人格の形成に最も大切なことなのではないかと思う。