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2008年4月

『階段からの花見』

2008年4月号

『階段からの花見』

浅田志津子(教育・福祉関係のルポライター)

 

このひと月は、いろいろあった。まず、先月半ばに浦和から大宮に引っ越した。1年程前から中古の一戸建てを浦和周辺で探しはじめたのだが、半年たつ頃には私達の予算では相当古くて狭い物件になることを深く理解し、結局、中古マンションに落ち着いた。

新居は安かっただけあって、5階建の5階でエレベーター無し。2歳の娘の手をひき、毎回ふうふう言いながらのぼっている。後ろから、ベビーカーと買い物袋を抱えた夫が、「毎日のことだから、こりゃ最高のメタボ予防になるなぁ」と笑いながら言う。

途中、3階の踊り場で休憩しながら、中庭の満開の桜を見る。太い幹は5階のベランダまで枝を伸ばし、リビングと和室の窓からの眺めを、はかない薄桃色に染めてくれる。ベランダに椅子を出して、ビールを飲みながら桜をめでるのが、今の私達の何よりの楽しみだ。

来年の今頃は、この階段を4人でのぼっている。わたしは、赤ちゃんをだっこして。夫は、娘の手をひいて。そして、やはり3階の踊り場で休憩しながら、家族で満開の桜を見るだろう。3歳になった娘は、桜を見て、なにを話すのだろう。2か月になるお腹をさすりながら、そんなことをぼんやりと思う。

第2子懐妊に気づいたのは購入の契約をしてからだ。正直、そのときはかなりブルーになった。赤ちゃんをおんぶして、娘の手をひき、買い物袋を持って5階までの階段をのぼるなんて考えただけで疲れる。けれど最近の娘は、手すりにつかまりながら、ひとりで階段をのぼり降りするようになってきた。母親の不安を少しでも和らげようと、娘もがんばっているのかもしれない。

「毎年、桜が咲くたびに、俺はここを買ってよかったと思えるよ」。そう笑う夫に「そうだね」と答える。そして、「さぁ、もうひとがんばり」と、残りの階段をのぼりはじめる。

 

 

 

『先輩指南役』

2008年4月号

『先輩指南役』

森田公子(ベビーシッター)

 

今春、息子が大学を卒業し、保育園勤務する運びとなりました。私が子育てしながら保育士として働いていたことをどのように見ていたのか分かりませんが、楽しそうな母の姿として目に焼きついているようです。子育ても一段落、故郷の先輩、後輩と当時の苦労話を楽しむような年になってきた私です。

保育料が手集金だったこと、通園バスに乗り遅れそうになったこともありました。七夕には雁皮紙で縒って作ったこよりを使いました。夏の暑い日、午睡時に鮮やかな指さばきで教えてくれた先輩のこよりは見事なものでした。また、毎月の皆勤賞に手づくりのご褒美をあげることを先輩が提案し、私は製作物をできる限り小さくして3センチ角ほどの折り紙で風物詩を表現し、連絡帳に貼りました。今ならシールですね。おかげで欠席児童が少なくなり、こちらは悲鳴を上げたことさえありました。

あの先輩が自分を率いてくれ、それに応え、覚えることがうれしかったのは『若さ』のせいだったのでしょうか。

老婆心ながら息子も保育園に勤務する中でそんな先輩指南役の存在に気づき、素直に学んでほしいものだと願わずにいられません。