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2008年5月

『ママ、ビデオに負ける』

2008年5月号

『ママ、ビデオに負ける』

浅田志津子(教育・福祉関係のルポライター)

 

3月の半ばから悪阻がはじまり、もうすぐ5ヶ月めに入るというのに、いまだおさまる気配がない。体重も5キロ減った。普段の私なら狂喜乱舞の事態なのに、鏡にうつるボロボロにやつれた自分の顔を見て涙ぐむ。家事も育児もままならず、家族に申し訳ない思いでいっぱいでいる。

これまで、娘にはなるべくテレビ・ビデオを見せない方針だったが、私が少しでも横になって休めるようにと、夫がアンパンマンのビデオを買ってきて一度見せたら、娘は完全にハマってしまった。ビデオを見ながら歌い、踊り、終わると「終わったった~」と寝ている私の元にかけてきて、巻き戻しをせがむ。最近は、朝、起きるやいなや、ビデオのカセットを持ってきて、「いれて~」とせがむほどだ。私もついつい、自分が休みたい一心で、また見せてしまうという悪循環…。

しかし、これまで知らなかったが、ビデオほどママを必要なときに自由にしてくれるグッズはないことを実感している。どこの家にも子供用ビデオがいっぱいあるわけだ。見せている間は、子供もテレビの前を離れないから危険もないし、教育的要素が高いものも多い。内容を吟味して、限られた時間のみ見せるぶんには、ビデオもいいかも…などと、私のビデオ肯定度もどんどん高くなっている。

昨晩、少し体調が良かったので、娘に絵本を読んであげていたら、娘は途中で立ち上がり、テレビの前でしつこくビデオをせがみはじめた。「ママといっしょに絵本」より、「ひとりでビデオ」のほうがいいのかと、驚きを持って、しばし娘を見つめていた。はじめて、娘に傷つけられた瞬間だった。夜、夫に話したら、「今まで『ママべったり』で大変だったから、いいじゃない」と笑っていた。…それはそうだけど、でもジイジでもバアバでもなく、ビデオに負けるとは、母として少し情けないような気もする。