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2008年10月

『世話好きなおばちゃん』

2008年10月号

『世話好きなおばちゃん』

浅田志津子(教育・福祉関係のルポライター)

 

あと3週間で予定日となった。先週の検診で、経産婦は陣痛・破水から出産までの時間が短いので、産気づいたら、即、病院に来るようにと言われた。夫が不在で、私ともうすぐ3歳の娘だけの場合、娘も病院に連れてきていいものか伺ったら、「見ているスタッフがいないので、それは困る」とのことである。産科は特に人手不足なので当然だが…。

夫の両親は車で約30分の距離に住んでいるが、運悪く渋滞すると1時間近くかかる。それを待っての出発だと、病院に到着するまでに産まれてしまう危険もあるとのことで、急遽、約1時間、娘を預かってくれる先を確保せねばならなくなった。事前に預かる日時がわかっていれば、シッターをはじめ、いくらでも対策はあるが、陣痛・破水という、いつ来るかわからないものが来たら、すぐ…という条件で預かってくれる先を見つけるのはけっこう難しい。まず、近所でないと無理である。

夫と相談した結果、マンションのお隣と、そこが当日、不在だったさいの次の預け先として、下の階の2件にお願いしてみることにした。半年前、引っ越してきた時に挨拶には行っているけれども、日頃は階段等ですれちがったら挨拶を交わす程度のおつきあいで、世間話さえかわしたことがない。頼みにいくときは、かなりの勇気がいった。

けれど、お隣の奥さんも階下の奥さんも笑顔で快諾してくれ、拍子抜けするほどだった。2件とも子育てが終わった年代で、むしろ「喜んで」という感じだ。「たとえ承諾してくれても、内心では迷惑では」と、数日間、頼むのを躊躇していた自分達がおかしかった。

「地域の交流が希薄な現代の子育ては孤独」と言われて久しいが、実際は、おせっかいと思われたくないので自分から進んで世話は焼かないが、内心では近所の子育て中のママから頼られるとけっこう嬉しい「世話好きなおばちゃん」は、まだまだ少なからずいるのかもしれない。二人目を出産する直前のこの時期に、そう感じられることがうれしい。