ホーム>子育てエッセイ>2009年4月

2009年4月

『ありふれた奇跡』

2009年4月号

『ありふれた奇跡』

浅田志津子(教育・福祉関係のルポライター)

 

「ふぞろいの林檎たち」などの名作で知られる、脚本家・山田太一氏の最後の連ドラ「ありふれた奇跡」が、先月、終わってしまった。私にとって、これほど「いいドラマ」はこの10年なかった。

ドラマの主人公、加奈(29歳)は、かつて外国で安易に行った中絶が原因で、子どもが産めない身体になってしまった女性である。家族にも言えず、ひとりでその傷を抱え、自分を責めて死のうとしたこともある。ドラマの中で、赤ちゃんや子どもを連れた女性を見つめる加奈の、なんともいえない表情を見るたびに、「母親」という立場が「なりたいけどなれない」女性にとって、どれほど執着せざるをえない幸福であるかをリアルに感じた。そしてそれは、育児にかなり疲れている今の私にとって、なによりの薬だった。

もちろん、子どもはかわいい。けれど、毎日毎日、3度の食事のたびに怒り、部屋を片づけるそばから散らかされ、あちこち汚され、大切なものをおもちゃにされたり、壊されたり…。全然言うことを聞かず、叱られた長女が泣きわめいていると、眠っていた5か月の次女まで泣き出してしまう。そんなときは、うるさくてうるさくて気が狂いそうで、「あぁ、もう嫌っ!ひとりになりたい!」と、切実に心の底から思う。たぶん、次女の深夜の夜泣きと授乳による慢性的寝不足もあるのだろうが、最近の私は、本当に育児に疲れている。これを書いている今も、パソコンで遊びたがる長女と格闘している…。

ドラマはいつもビデオ録画して、長女が夕寝するつかのまの静寂なひとときに、次女をだっこしながら観た。観終わると、しばらくその余韻にひたりながら、次女のずっしりとした重みとぬくもりを味わう。そっと襖をあけて和室で眠る長女を見つめると、普段はただただ、うるさくて手がかかる存在なのに、たまらなくいとおしい。DVDが絶賛発売中なので、ひとりでも多くのママに、ぜひ観てもらいたい。