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2009年9月

『たくさんの不思議』

2009年9月号

『たくさんの不思議』

浅田志津子(教育・福祉関係のルポライター)

 

先子連れで十日間、伊豆の実家に帰省し、無事に戻ってきた。帰省中は、子ども達は親に押しつけて、ひとりの時間を満喫しようという野望もあったが、そうもいかず…。父も母も、趣味の活動やボランティアで忙しく、ほとんど毎日、外出してしまうのである。

かつては、そんな両親に不満を感じることもあった。でも、親が70を過ぎた頃から、「親もあと何年生きられるかわからない。元気なうちにしたいことをして、余生を存分に満喫してほしい」と思えるようになった。子どもだけでなく、私も少しは成長しているのである。

それでも、父は陶芸教室を、母はコーラスを休んで、帰省中に2回、みんなで海に行った。昨年は波を怖がって、「もう帰る~」と泣いていた3歳半の長女が、今年は自発的に波に近づいていくからびっくりだ。

繰り返し、繰り返し、よせてはかえす波の動きがたまらなく不思議なようで、「なんで、波がまた帰ってくるのぉ?」「どうして、また行っちゃうのぉ?」と、幾度も聴いてくる。「そんなこと、ママに聞かれても…」と思いつつ、「なんでだろうねぇ、不思議だねぇ」と答えながら、しみじみと噛みしめる思いがある。

そうなのだ。娘の言うとおり、海の波に限らず、この自然界は、たくさんの不思議で満ちているのだ。幼児の頃だけ、それを「不思議」と感じることができる。けれど、もう5歳くらいになると、「そういうものだ」という分別ができてしまい、当然のこととして受け止めるようになる。

長女が「不思議」を感じられる時間は、もう残りわずかだ。せめて、それまでの間に少しでも多くの不思議に出逢わせたい。なぜ、雨上がりに美しい虹がかかるのか、なぜ、秋になると葉っぱの色が変わるのか、どうして手のひらに落ちた雪がすぐに溶けて消えてしまうのか。その理由を科学的に理解するのは、大人になってからでいい。

 

『赤ちゃんの日光浴』

2009年9月号

『赤ちゃんの日光浴』

中舘慈子

 

こんな話を聞きました。イタリア在住のそのお母さんは、生後2週間の赤ちゃんに新生児黄疸が出たとき、かかりつけの医師に「海辺の太陽の光線を積極的に浴びさせてください。」と言われたというのです。新生児に海辺の日光浴?あまりにも無茶なのではないかと思いました。

日本でも光線療法と言って、赤ちゃんに人工的な光線を当てることにより、血液中のビリルビンを変化させて、体から排出する治療があると聞いています。しかし、海辺の紫外線は赤ちゃんにはあまりにも刺激が強すぎるのではないでしょうか・・・・?

6月のイタリアの海辺はまだ閑散としていましたが、海の家の管理人は陽気にベビーカーの赤ちゃんに笑いかけると、そのお母さんに言ったそうです。「赤ちゃんに海辺の光を当てることはとてもよいことです。今日も何人も小さい赤ちゃんが来ていますよ。」

パラソル越しの6月の優しい太陽を浴びて、赤ちゃんの肌はどんどん白くなっていったそうです。天然の光線がビリルビンを体から排出させるのを助けてくれたのでしょう。波の音、抜けるような青空も赤ちゃんとお母さんの心を癒したことでしょう。

とはいうものの、日本で新生児を海に連れて行くことがよいとは言い切れません。たとえば夏の湘南の海の紫外線はとても強く、大人でも火ぶくれができるほどです。赤ちゃんの海水浴は早くても1歳過ぎからにした方がよいと思います。それも万全の日焼け対策を忘れずに、短時間から・・・。

9月に入って、日差しがやわらかくなってきました。赤ちゃんをベビーカーに乗せて、外気浴をするのによい季節になってきました。日焼け止めや虫除けも忘れずにお出かけ下さい。木漏れ日、木々のそよぐ音や鳥のさえずり、澄んだ空気を感じながら、そして少し色づいてきた木の葉が揺れるのを見つめながら、赤ちゃんは自分が自然の一部であることを感じ、のびやかに育つ力を養われることでしょう。