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2009年10月

『キッザニア初体験』

2009年10月号

『キッザニア初体験』

浅田志津子(教育・福祉関係のルポライター)

 

先週、はじめて家族でキッザニアに出かけた。子どもが好きな仕事を選んで働き、お給料(キッゾ)をもらい、そのキッゾで買い物や習い事を楽しむ屋内施設である。午後4時、豊洲のららぽーと内にあるキッザニアに到着。全日空、ヤクルト、森永、出光などなど、約50の企業によるユニークなパビリオンが商店街のように並んでいる。ここは「子どもが主役」なので、パビリオン内には子どもしか入れない。親はガラス張りのパビリオンの外側から、我が子が働く姿をじっと、ときにはハラハラしながら見守るのだ。

まず、娘にどの仕事を体験したいか聞くと「パン屋さん!」と即答。調理服に着替え、帽子をかぶり、パン屋のお姉さんの説明を聞いた後で、実際にパンづくり開始となる。神妙な顔をして真剣にパン生地をこねたり、まるめたりする娘をガラス越しに見つめながら、ついつい、「ほら、ちがうでしょ」と手を出したくなってしまう。隣のママもおんなじで、ガラス越しに息子に怒鳴っている(笑)。

試行錯誤しつつも、なんとか自力で作業を進めていく娘を見ながら、日頃、自分が必要以上に娘のすることに口や手を出しすぎていることを実感する。子育てにおいては、世話を焼くより、「待つ」「見守る」ことのほうが、実は何倍も難しいのだ。

そして、はじめての「仕事」を終えた娘が、焼きたてのパン3個と初任給5キッゾを手に、満面の笑顔でお店から出てきた。「さっちゃんが焼いたんだよ!お金ももらったよ!」と得意げである。夫と私にもひとつずつくれ、みんなで食べた。おいしかった。

その後も、ピザ屋、花屋などで働くうちに、あっという間に9時の閉館となる。帰りの電車の中、本日の稼ぎ、計20キッゾを手に握りしめたまま、娘はすぐに眠ってしまった。その寝顔を見つめながら、いつか娘が本当に社会で働く日のことを思う。現実の仕事は、そう甘くないけれど、それを知るのは、まだ先でいい。子どもの頃に働くことを「楽しいこと」としてイメージできるということは、大人になることに「希望」を感じられるということだから。