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2010年2月

『ご近所づきあい』

2010年2月号

『ご近所づきあい』

浅田志津子(教育・福祉関係のルポライター)

 

昨年の4月から、我が家は(正確には夫が)自治会長をしている。正直、当初はあまりの雑務と集会の多さに、夫も私も不平たらたらであった。だが、この自治会活動をつうじて、近くに住む今年の役員9世帯と知りあいになった。独身の頃からずっと、「地域」に全く知り合いを持たずにきた私にとって、いわば人生ではじめての「ご近所づきあい」がはじまったわけである。

会長になって3ヶ月ほどたった頃、長女がウイルス性胃腸炎にかかり、嘔吐と下痢が止まらなくなった。小児科の受付終了時間まで、あと30分しかない。だが、病院の待合室で1歳の次女をだっこしながら、長女をケアするのは到底無理である。あいにく夫は出張中だし、今からシッターを頼んでも遅すぎる。途方にくれながら宙をあおいだら、壁に貼られた自治会役員の連絡網が目に入った。藁にもすがる思いで、おそるおそる副会長宅に電話をかけて、次女を一時間ほど預かってくれないか聞いたら、あっさりと引き受けてくれた。

次の集会のさいに、このことが少し話題にのぼると、他の役員の方々まで「困った時は、うちも預かるわよ」と言ってくれた。ここで、その言葉を「単なる社交辞令」としないところが私の性格であり、近くに親がいない環境で、赤ちゃんと幼児を育てる母親の切実さである。真剣な表情で、「どうぞよろしくお願いします」と頭を下げた。

もちろん、これは緊急の、または突発的な事態に限っての話で、そうでなく、予め外出の予定がわかっている場合は、やはりシッターを依頼すべきだと思う。なにより「安全度が高い」からだ。

だが、シッターは原則、完全予約制であり「今から30分~1時間以内に来て!」といった要望にはなかなか対応できない。そういうときのためにも、ご近所とのつながりを日頃からある程度は築いておくことがいかに大切か、今回の件で身にしみた。やはり子育てには、地域の手助けが必要なのである。