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2012年4月

長女の巣立ち

ときめきエッセイ 第99回 

長女の巣立ち

浅田志津子(教育・福祉関係のルポライター)

 

4月9日から、我が家は「新生活」が始まった。長女が小学校に入学したのだ。これまでは朝、八時半頃に家を出て、長女と次女を車で保育園に連れていく生活だったが、今はちがう。小学校は通学班ごとの集団登校で、長女は「7時20分」に家を出ることになり、「大変」である。 

毎朝、通学班の集合場所である家の前の公園まで、娘と手をつないでいく(3歳の次女も連れていく…)。上級生の女の子達といっしょに、5人で縦一列になって、小学校まで約25分の道のりを歩くのだ。 

長女は新しい人間関係に慣れるまで、かなり時間がかかるタイプで、通学班でも、クラスでも、まだほとんど話せていないようだ。朝、公園で整列して歩きはじめるさいに、必ず、不安げな表情で私を見あげる。いっしょについていってやりたい気持ちを抑えて、満面の笑顔で「いってらっしゃい!気をつけてね~」とちぎれんばかりに手を振り、列が見えなくなるまで、次女と手をつないで見送る。 

入学式から早2週間、まだ授業がほとんど「遊び」に近いこともあるせいか、娘はけっこう楽しそうに学校に通っている。隣の席の男の子の名前や、前後の席の女の子の名前が、ようやく最近になって、娘の口からぽつりぽつり、出るようになってきた。 

今朝、公園で整列して小学校へと出発するさい、初めて娘は、私を一度も見なかった。もう、通学班のお姉ちゃん達にも慣れ、心が学校に向いている表れかもしれない。親として喜ばしいような、どこか淋しいような、複雑な思いにかられながら、歩き始めた娘の小さな背中に大きく手を振った。 

「いってらっしゃい!気をつけてね~」。

 私の声を背中で聞きながら、ふりかえることなく歩いていく娘を、列が見えなくなるまで見送った後、しばらくその場に立っていた。はじめて味わう感傷だった。つないだ次女の手のぬくみが、ありがたかった。