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2013年3月

「父性」 ‐北海道の暴風雪‐

ときめきエッセイ 第110回

「父性」
‐北海道の暴風雪‐

浅田志津子(教育・福祉関係のルポライター・詩人)

 

今月はじめ、北海道を襲った暴風雪は9人もの犠牲者を出した。中でも、9歳の娘を屋外で10時間以上抱き続けて凍死した53歳の漁師の父親と、父の腕の中で奇跡的に助かった娘のニュースには、国中が泣いた。

この父親は2年前に妻を亡くし、それからはひとり娘の成長をいきがいにしていたという。ひなまつりのケーキを予約していたのに、受け取れないまま逝ってしまった。

この事件を聞いた瞬間、私は思い切り平手を打たれ、自身の誤りを正されたような気がした。これまでずっと、「父性は母性にはかなわない」と思いこみ、母性のほうが、より根源的なものだと思っていたから。

もう十年以上前、阪神淡路大震災で、奇跡的に助かったのにも関わらず、すぐそばで親を亡くした哀しみから立ち直れないでいる子ども達に向けて、「鼓動」という詩を書いた。詩の中で、子どもの上に覆いかぶさる存在は、私には当然、「母」しかありえなかった。

しかも、周囲には母子家庭が多い。離婚原因の大半が、夫の女性問題や家庭放棄、経済的無責任などである。現代は父親になっても、親としての最低限の責任さえ背負えない男が少なくないのだ。母親と祖父母によって育てられる子どもが増え続ける中、この国における「父性」というものが滅びつつあるような不安を、日々感じている。そんな中でこのニュースを聞き、平手を打たれたような気がした。

 

夏音ちゃん。あなたのお父さんは「父性」について、心臓が痛くなるほどの強さで、私達に教えてくれました。夏音ちゃんは、父親に限りなく愛された幸せな子です。そしてお父さんも不幸じゃない。あなたを守りきることができたから。

もうお父さんは、天国でお母さんに会えて、空から二人で夏音ちゃんのことをいつも見ています。二人を安心させて喜ばせるために、日本中が夏音ちゃんの幸せを願い、応援しています。私も、これからあなたに手紙を書いて、本といっしょに送ります。

夏音ちゃんが将来、お父さんのような強くて優しい男と出逢えますように。そしていつか「お母さん」になったら、お父さんがあなたを守りきれて、どんなにうれしかったか、天国のお母さんがどんなに喜んだか、その事を噛みしめる日が、必ずくるからね。