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2013年5月

ペンダントを探した日

ときめきエッセイ 第112

ペンダントを探した日

浅田志津子(教育・福祉関係のルポライター・詩人)

先月末の連休、家族で筑波山に登った。その日の夜は筑波に泊まり、翌日の午後は、霞ヶ浦総合公園に行った。湖に面して風車や水車、蓮の植物園などがある広大な公園だ。ローラーすべり台や、ロケットの形をした巨大遊具もあり、ハイテンションな子ども達と遊びながら、ふと首に手をやってはっとした。ペンダントの革ひもの中心にぶらさがっているはずの、長方形の貝殻細工がない。

夫は時々、地方の鉄道写真を撮りに数日間のひとり旅に出る。たまに、土産物屋で売っているペンダントやブローチを私に買ってきてくれることもある。失くしたペンダントは、4年前、夫が島根の一畑電鉄を旅したさいに、灯台のある日御碕(ひのみさき)の売店で買ってきてくれたものだ。貝殻を素材にした可憐な花模様が美しく、お気に入りだった。

どこで落としてしまったのだろう。デジカメの画像を確認したら、子ども達とローラーすべり台をすべる私の胸元に、その貝殻細工が光っていた。よかった、この場所で落としたのなら、きっと見つかる。落としてから、まだそんなに時間もたってないはずだ。

夫と二人で、最後のほうは子ども達もいっしょになって探した。でも、見つからないまま日が暮れて、もう帰ろうと夫が言った。

「貝殻がキラキラ虹色に光ってきれいだからさ、きっと地元の女の子が拾ったんだよ。その子の宝物になってるだろうから、それでいいよ」。

そう言って笑う夫の背景に広がる夕焼けが、あんまりきれいで、なんだか少し泣きそうになった。この遠い街の湖畔の公園で、夫と子ども達と、日暮れまで貝殻のペンダントを探した日の事を、私はずっと忘れないだろうと思った。たぶん、夫はあっさり忘れるだろうけど。

いつか子ども達も巣立って、おばあちゃんになって、懐かしさと切なさを胸に、遠い日のこのささやかなエピソードを思い出したときに、同じくおじいちゃんになった夫が、そばにいてくれたらいい。「そんなこと、あったっけ」と首をかしげる夫に、「もう、なんでもすぐに忘れちゃうんだから…」と、たあいもないやりとりができたらいい。