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2013年6月

娘の自転車デビュー

ときめきエッセイ 第113

娘の自転車デビュー

浅田志津子(教育・福祉関係のルポライター・詩人)

 

先週から、小学2年生の長女が、近くの公園までひとりで自転車に乗って出かけるようになった。もともと自転車を買い与えたのが小学1年の冬と遅めで、いきなり補助輪無しからのスタートだったが、ふた月もする頃には公園内のトラックでは乗れるようになった。

だが、私達が住むさいたま市は、道路がきちんと整備される前に建物が先に建ってしまった歴史もあり、交通事情が極めて悪い。5差路、6差路、車がすれちがえない一通でない狭い道路や、歩道の幅が1m以下のバス通りがあちこちにある。年間の交通事故発生件数も全国ワースト5の常連であり、中でも自転車と車の事故が極めて多い。そんな訳で、街中での自転車デビューは「まだ危ない…」と先延ばしにしてきた。

でも、先月から近所へ買い物にいくさいに、長女は自転車で、私は歩きで出かけるようになり、少しずつ街中で乗る練習を重ねていった。まだ、狭い歩道で歩行者とすれちがえず、そのたびに止まってはいるが、なんとか近所の公園まではひとりで乗って行けるようになった。学校から帰宅しておやつを食べ終わると、手さげに遊び道具をいれ、自転車の鍵を手に友達の待つ公園に出かけていく。

 昨日、マンションの5階のベランダから、駐輪場での長女の様子をそっと見学した。手さげを前かごにいれて自転車の鍵をガチャンと外し、よいしょと重そうに引っ張り出す。慎重にサドルにまたがると、両足をしっかり地面につけてから、ゆっくりとこぎ始めた。駐輪場を出てマンション前の坂をくだり、角の交差点を曲がり、見えなくなった。ベランダで見守る私には気づかず、ふり返ることもなく。

 今はまだ近くの公園だけど、そう遠くないいつか、ひとりでずっと遠くへ出かけていくだろう。自転車では行けない遥か遠くへも、電車や車、飛行機で、私を置いて出かけていく。ついこの前まで、「ママといっしょじゃなきゃ、やだっ」が、口癖だったのに。