ホーム>子育てエッセイ>2013年10月

2013年10月

なりたい「職業」と「学歴」

ときめきエッセイ 第117

なりたい「職業」と「学歴」

浅田志津子(教育・福祉関係のルポライター・詩人)

 

 私が住む街には、製菓の専門学校がある。建物一階の「実習室」はガラス張りになっており、ガラス越しに生徒さん達の実習の様子を見学できる。ときどき、前を通ったさいに実習中だと、娘達としばらく見物していく。これの影響もあってか、最近の長女は「私もあの学校にいきたい。お菓子づくり習って、妹とケーキ屋さんやりたい」と夢を口にする。「それいい!」と賛同しつつ、ふと自分自身をふりかえる。

 小学生だった頃の私にも、なりたい職業がいくつかあった。母が洋裁好きで、余り切れで手芸を教えてくれたので、自分で作った人形などを売る手芸品屋に憧れたりした。末っ子だったぶん、年下の子ども達の相手をするのも好きだったので、保育士にもなりたかった。そのほかにもバスガイドなど、いろいろあったが、高校に進学する頃には、そういった具体的な職業はあまり考えなくなっていた。とにかく少しでも偏差値の高い高校に入ることが最優先だったから。

 ほぼ全員、大学進学する高校に入ったら、やはり自分も大学に行くのが当然に思え、結局、職業について深く考えることはないまま、少しでも偏差値の高い大学への進学をめざした。

私も含め、ほとんどの大卒女子の就職活動は、「なにになるか」ではなく、「どこの会社(組織)の社員(職員)になるか」で、「就職」ではなく「就社」である。大卒の学歴を持ってしまうと、もう、それが必要ない職業につくのは、もったいない気がしてしまうのだ。

だが実際には、卒業後、一流企業のOLになったものの、数年で退社して専門学校に入りなおし、保育士や看護士、デザイナーなどの「手に職系」の道に方向転換する女性は少なくない。OL経験も決して無駄ではないだろうが、多くの日本女性が、本当はなりたい、「学歴を必要としない具体的な職業」があるのに、学歴を手にいれたがゆえに、素直にそれを選べなくなってしまう現実は、不幸というか、さびしい。