ホーム>子育てエッセイ>2014年3月

2014年3月

東北大学の「かたりつぎ」

ときめきエッセイ 第122

 

東北大学の「かたりつぎ」

浅田志津子(教育・福祉関係のルポライター・詩人)

 

3月5日、東北大学災害科学国際研究所が主催する「かたりつぎ」が仙台で開催された。学術と芸術が融合した大イベントで、前半は研究所による講演や研究報告、仙台南高校の合唱、住職の法話、後半は「詩の朗読・音楽・絵のコラボ」で、「東北の今」を伝える構成である。

東日本大震災で被災した7名の方々が取材で語った壮絶な被災体験やその後の生活、心情、行政への不満、要望、伝え残したい教訓などを、7編の詩の形式にまとめたものを、女優の竹下景子さんが巨大水彩画「南三陸の黄金」を背景に、ピアノ・オーボエの生演奏と共に朗読された。集まった1200人の観衆がそれぞれの想いを胸に耳を傾けていた。

縁あって、この被災した方々の語った内容を、詩の形式にまとめるという「朗読台本執筆」の仕事を今回させて頂いたのだが、録音音声を繰り返し聴いて文章化してゆく作業の中で、私自身あらゆることを思った。

 

震災以降、実姉と実父を癌で立て続けに失い、ふとした瞬間に押し寄せる無念さと後悔、喪失感に怯える日々だったが、この仕事をつうじて、突然、震災や津波で肉親を奪われた被災地の方々の心情を思ったら、姉も父も、癌センターで最先端の癌治療を受けられたこと、あたたかいベッドの上で家族や医師に見守られて旅立てたこと、そして納得のいく形で葬儀や法事をあげられただけでも幸せだったのだと、少しずつ思えるようになっていった。本人、そして遺族にとっても、もっともつらいのは「行方不明」のままでいることだ。

きっと私だけでなく、震災以降に肉親を亡くした多くの人々が、同じような思いを胸に、深い喪失感からはいあがったのではと思う。被災体験やその後の生活をかたりついでゆくことは、今後の災害時にそなえた防災面での重要性だけじゃない。今、生きている者は、過去を悔み続けるのではなく、今後、同じ過ちを繰り返さぬよう、未来のために「動く」大切さを教えてくれる。当たり前に過ぎてゆく日常のいとおしさに気づかせ、日々を慈しんで生きることの意義を感じさせてくれる。

私も、歳月と共に変化してゆく被災者・被災地の現状や心情を、詩という形式で発信し続けていくことで、この「かたりつぐ活動」に関わり続けてゆきたい。