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2014年7月

娘の初ピアノ発表会

ときめきエッセイ 第126回

娘の初ピアノ発表会

浅田志津子(教育・福祉関係のルポライター・詩人)


 

   先月末、長女の初めてのピアノの発表会があった。習い始めて早3年、今年は本人も出たいというので、初挑戦することになった。曲は、「アヴェマリア」(作曲グノー)である。

  当日、ベージュのドレスを着て、たったひとりでグランドピアノに向かい、美しく切ない旋律のアヴェマリアを演奏する娘は、(親バカだが)とても可憐で愛おしかった。毎日、見ている娘のあどけない横顔を見つめながら、ついこの前まで、なにもできない赤ちゃんだったのに、たった8年で、もうこんなに複雑で難しいことができるようになるなんて、子どもってすごいなぁと心底思う。もう百回以上聴いている娘の演奏に、そしてひたむきに演奏する娘の姿に、泣きそうになった。

  数回まちがえつつも、なんとか止まらずに、娘は無事に演奏を終えた。立ち上がり、舞台の前に出て、家で何度も練習した通り、美しく丁寧におじぎをする娘の姿に、「3年間、続けてきてよかったなぁ」と心底思った。習い始めて最初の2年は、練習嫌いな娘と家で決まって大バトルになり、娘は泣きだし、「もう、やめる」と癇癪を起した。私も「ピアノの練習がなければ我が家はどんなに平和だろう...」と思いつつ、「とにかく3年だけ、がんばってみる」を信条に、たくさんの壁を乗り越えてきた。

  そして、3年目に入ってしばらくした頃、「ヘ音記号」の壁を娘はいつのまにか乗り越え、少しづつピアノを弾くことを楽しむようになっていった。学校の音楽朝会で歌う曲を、ピアノで弾きたがるようになった。それこそが、私が求めることだ。自ら音楽を奏でる喜びのある人生を、私は娘に授けたかったのだ。

  「いつか娘のピアノに寄り添われて、自作の詩を朗読したい」。3年前、娘がピアノ教室に通い始めたときに、ここに書いた夢が実現する日も、そう遠くないのかもしれない。その頃には娘のほうが立場が上で、「ママ、そこの朗読、もっとピアノにのせて」とか、娘に厳しく指示を出されているのかもしれない。そんなことを想像するだけで、わくわくする。