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2014年9月

長女の学習机デビュー

ときめきエッセイ 第128回 

 

長女の学習机デビュー

浅田志津子(教育・福祉関係のルポライター・詩人)

 

 これまで、置き場所がなくてずっと買わずに引きのばしてきた長女の学習机を、先日ついに買った。2年生までは食堂やリビングで宿題をしていたが、3年生ともなると宿題にかかる時間も長く、勉強道具やおもちゃ箱には入れたくない私物も増えてくる。結局、一念発起して半ば物置きになっている4畳半を一日がかりで片付けることにした。大量のモノを処分し、なんとか窓際に学習机を一台、置くスペースができた。

 そして、長女の学習机がやってきた。落ち着いた渋い木目調で、どっしりしている。ぞうきんで引き出しの中まできれいに拭き終わると、娘は、いそいそと勉強道具を上棚に並べ、その後、大小あわせて全部で6つもある引きだしのどこになにをいれるかを、うきうきと考え始めた。「やっぱり宝物はこっちにしよ」「この引きだしは文房具だけにしよ」などと独り言を言いながら、そのたびにモノをいれなおしている。口出しせずに娘に任せていたら、夜になっても、まだやっていた。

 学習机は、子どもにとっての初めての「自分の城」である。棚には勉強道具だけでなく、お気にいりのモノをディスプレイして自分の空間を演出する楽しさがある。そして、たくさんの引き出しは、自らつくる「秩序」であり、初めて持つ「秘密の居場所」でもある。

 ようやく娘が寝たあと、学習机をのぞいてみた。上棚には勉強道具のほか、自作の工作品が並んでいる。デスクマットには、時間割表、給食の献立表、写真やカードなどがはさまっている。引き出しの中ものぞきたかったが、やめた。私自身、母親に机の引き出しを開けられるのが我慢ならない子どもだったから。

 その後、食堂で四葉のクローバーの便箋に娘への短い手紙を書き、デスクマットの片隅にそっといれた。娘がそれをぬかなければ、今後、机に向かうたびに、嫌でもその手紙が目につくだろう。読み返すたびに、私の娘への想いが少しでも伝わってくれればいいなと思う。