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2014年12月

義父母との旅

ときめきエッセイ 第131回

義父母との旅

浅田志津子(教育・福祉関係のルポライター・詩人)


  義父母は、今時のシルバーとは異なり、外食や旅行、習い事や趣味を楽しむといった「レジャー」に関心がない。夫が「お金出すから、二人で旅行でもしたら」と勧めても、「いいよ、もったいない」と取り合わない。二人で近所を散歩したり、スーパーで食材を買ったり、時々、掃除のアルバイトをしたり、孫の相手をする日々で満足できる性分なのだ。
  それはそれで幸せだとも思うが、まだまだ元気な今のうちに、少しは贅沢もしてほしいという思いが私達にはある。なので先月、半ば強引に秋の旅行に連れ出した。

  まずは車で群馬に向かい、群馬の桐生駅~栃木の間藤駅を結ぶ「わたらせ渓谷鉄道」、通称「わてつ」に約2時間乗車した。渡良瀬川が流れる渓谷沿いを走るローカル線で、車窓の美しさが全国的に知られている。乗車したときは、ちょうど午後の穏やかな陽ざしがあたって、山の紅葉も川の水面もまぶしく輝いていた。窓際に座った義父が車窓を眺めがら、「きれいだなぁ」とぽつりと言った。いつもテレビを見ながら文句を言うのが趣味である義父の、その素直なつぶやきが心にしみた。
  車内で義母はいつものごとく、向いの席の老婆や離れた席の子連れの母親にバナナやお菓子をあげていた。結婚当初は、義母のそういった「こてこての下町のおばちゃん」的行動が少し恥ずかしかったが、あれから十年、世話好きで情の深い義母にどれだけ助けられてきたかを実感している今は、そうでもない。こういうおばちゃんが地域にひとりいるだけで、救われる人が大勢いることを、今の私は知っている。

  わてつ沿線の「星野富弘美術館」、「足尾銅山」、「高津戸峡」、「小平鍾乳洞」、どこも見応えのある観光地だった。宿泊した温泉旅館「神梅館」もよかった。私の親は旅行好きな分、けっこう注文も多いタイプだが、義父母は逆で、ひとつひとつに「すごいねぇ」「おいしいねぇ」「温泉が最高」「贅沢だねぇ」と喜んでいた。
  翌日の夜、帰路へと向かう車の中で、「楽しかったよ。ありがとね、本当に」と礼を言われ、うれしかった。来年も半ば強引に、どこかへ連れて行きたいと思う。義父母が、まだまだ元気なうちに。