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2015年2月

ささやかな奇跡

ときめきエッセイ 第133回 

ささやかな奇跡

浅田志津子(教育・福祉関係のルポライター・詩人)

 

先月、このエッセイが3月で終了する事を発表したところ、たくさんの方々からメールを頂いた。読みながら、連載を始めてからのこの十年の間に私の人生が大きく変わっていったように、読者の方々の人生にもさまざまな変化があったことを噛みしめている。

十年前は息子3人を育てる主婦だった方が、息子達が巣立ち、今は夫婦だけの暮らしだ。「山のような洗濯物、10キロの米袋、ずんどうでつくった豚汁が、今はただただ懐かしく愛おしいです」と書いている。

私も、いつか子ども達が巣立ったら、今のこの、にぎやかすぎるリビングの隅に置いた仕事机に向かい、あまり意味のない耳栓をしながらルポやエッセイ、詩を書いた日々を懐かしく愛おしむのだろうか。

 

先週、心底驚くことがあった。小3の長女が、学校から帰宅するなり、興奮して叫んだのだ。

「聞いて聞いてっ!!今日ね、全校朝会で、校長先生がママが書いた『師走の大宮駅』っていう詩を紹介したんだよっ!!」

その詩は、人権団体が月二回発行する新聞から頂いている詩の連載で、昨年の暮れに発表したものだ。まさか、娘が通う小学校の校長先生がその新聞での連載を読んでいるとは夢にも思わず、のけぞるほど驚いた。

「校長先生が3月の『学校便り』に詩を載せるって言ってたよ」という娘の言葉に、事前に発行元の許可をとっておいたほうが無難だなと思い、担任の先生にそのむね手紙を書いたら、校長先生から丁寧な返事が来た。

毎月、楽しみに読んでいる詩の連載の作者が、実は児童の保護者だったと知ってどれほど驚いたか、これまでに掲載された数々の詩に、どのように共感してきたかなどが綴られていた。うれしかった。

これまでも、見知らぬ読者の方が、主人や私のHPで詩画展の開催情報を知り、会場で知り合うことは何度もあった。でも、こんな日常の中で見知っている方と、実は詩を通じて心が響きあっていたなんて、本当にまぁ、世界はなんて狭いのだろう。

こんな、ささやかな「奇跡」に出逢うたびに、私は噛みしめずにはいられない。この混沌とした世界に、生きていることの愛おしさを。