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ひとりぼっちじゃない子育て 白川優子

メーリングリスト③。 ~ひとりぼっちじゃない子育て(7)~

メーリングリスト③。

~ひとりぼっちじゃない子育て(7)~

白川 優子(ライター)

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「明日は保育園の卒園式!」そんなタイミングでおこった東日本大震災。

保育園に電話が通じない中、メーリングでクラス全員の保護者の無事を確認したものの、おのおのの詳しい状況がわかってきました。無事に子どもを迎えに行き、自宅に戻れている保護者はほぼ半数。

夜になってもほとんど、都心から歩いて戻っている最中でした。なかには、海外出張から戻る途中で地震のため成田空港に着陸できず、九州に降ろされている親、職場から待機命令が出て会社に泊まることになった親もいました。

「たぶん今夜中に帰れない。明日の卒園式には間に合いそうもない」と悲痛なメールが何通も届き、

「なんとか園長先生に連絡をつけて、卒園式を延期してもらおう」という意見で一致することに。

「卒園式なんてもうどうでもいい。とにかく一秒でも早く子どもの顔が見たい」

というのが多くの保護者の思いでした。

 

保育園の近くに住むお母さんが、余震の続く中、園長先生に話をしてくると保育園に出向いてくれました。すでに21時をまわっていたのですが、まだ園児が残っている中、保育士さんたちが必死に世話をしてくれており、園長先生も目の前の子どもたちのことで精一杯で、卒園式のことまで頭がまわらなくなってしまった・・・とのこと。

明日までに帰宅できない保護者が何人かいることを伝えると、園長先生も卒園式の延期を決定してくれました。

 

「明日の卒園式は延期です」

このメーリングが送信されると、一斉に、まだ帰宅していない保護者から安堵の声が。

「延期のメールでほっとして号泣しちゃった。」「よかった!職場で眠れないところでした。休みます」

「ありがとう、ありがとう。このメーリングがあったから、くじけそうになってたけど頑張れる」

「ほかのみんなも頑張って歩いてると思うと、ハイヒールの足が痛いけどふんばるよ」

 

自宅に戻れた親も戻れない親も、不安な夜をメーリングで励ましあって過ごしました。なかにはメーリングで連絡をとりあい、奇跡的に途中で合流して一緒に深夜に到着した保護者たちもいました。

 

無事に皆が帰宅でき、子どもの顔を見れた喜びと共に、現実は想像をはるかに超えてやってきました。

東北地方ほどの被害はなかったにせよ、スーパーの棚から物が消え、ガソリンスタンドには行列ができ、「輪番停電」がおこなわれるという、生まれて初めての経験に戸惑いました。

そこでも「○○のスーパーにはまだお米が売っていたよ」「△△ガソリンスタンドは一台30リットル制限です」等、メーリングのおかげで情報をもらい、助け合うことができました。

何にも属さずひとりで子育てをしていたら、この未曾有の事態を乗り切ることができたでしょうか。

 

約2週間後、無事に卒園式を終えることができ、メーリングの役割も、終わりを告げました。

6年間、最初は離乳食やオムツの相談から始まったメーリングでしたが、最後の最後に最大限の活躍をしてくれました。

 

今は、メーリングリストに加え、SNSなど情報共有はさらに進化をしています。

小さい子どもを抱えていると、ちょっと現場まで見に行く、とか、とりあえず並んでみる、などなかなか自由に動けない中、

実際に見聞きした人からの情報が入るのはとてもありがたいことです。

中には誤った情報やデマが拡散されてしまうことがあり、気をつける必要がありますが、何かが起こったときにひとりぼっちにならずにすむ方法のひとつとして、うまく活用できるとよいですね。

 

 

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