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子育てエッセイ

子どもへの、安全教育

2006 年 3月号

『子どもへの、安全教育』

浅田志津子(教育・福祉関係のルポライター)

この3か月、ほとんど外出せずに家のなかで過ごしているためか、最近の私はかなりのテレビっ子(子ではなく、正確にはおばさんだが...)になっている。もともとは活字派で、テレビはほとんど見ない生活だったが、昨年、懐妊をきっかけに仕事を減らし、パソコンに向かっている時間がぐっと短くなったこともあって、テレビを見る気持ちが芽生えていったのだ。

とは言え、育児の合間の「ながら見」がほとんどで、集中していない分、CM もけっこう見る。そんな私が、最近気になっているのが「公共広告機構」の CM である。深刻な社会問題を少しでも改善すべく政府が放映する CM で、これまでに「エイズ」「児童虐待」「家庭における父親不在」「いじめ」「悪徳商法」「うつ病」など、さまざまな問題をテーマにしている。そしてこの数ヶ月間、頻繁に放映されているのが「子どもの連れ去り」をテーマにしたものだ。夜の住宅地で、子どものシマウマに怪しい影が近づいて「子どもをひとり歩きさせない」という字幕が出る CM と言えば、「あぁ、あれか」とわかる人も多いだろう。

最近は、子どもたちが覚えやすいよう、唱歌を替え歌にした、「知らない人にはついていかない♪」という歌詞ではじまる CM が頻繁に流れている。明るいノリで、親しみやすい手法で子どもに直接訴えているのが斬新だが、歌詞で気になるところがある。「知ってる人にも~」という部分だ。ここ最近の、子どもが被害者である事件の加害者が、子どもにとって「知らない人」どころか、すごく身近な存在だったことを考えれば、この歌詞は子どもの安全上、適切なのだろう。だが、この歌を聞くたびになんだか哀しくなってくる。「人はみんな疑ってかかれ」と幼い子どもに教えているような気になってしまうのは私だけだろうか。

先日、買い物の帰り道、小学生の女の子ふたりが、学校の図工でつくったのだろう、風車を手に持って、くるくるまわして遊びながら歩いていた。子ども好きゆえ、「きれいねぇ」と声をかけたら、二人は顔を見あわせたのち、ダーッと走っていってしまった。本当に私を怖く感じたのか、面白半分だったのかはわからないが、私がかなり傷ついたのは事実である。同時に、彼女たちの行動はまちがっていないこともわかる。夜、晩御飯を食べながら、「むやみに子供に声をかけると怪しまれるから、もうよすわ」と言う私に、主人は「哀しい時代になったよな」とつぶやいた。ほんのひと握りの犯罪者のせいで、すべての大人が子どもにとって危険な存在とされる現状は、実に哀しい。

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