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子育てエッセイ

『母が縫う服』

2008年1月号

『母が縫う服』

浅田志津子(教育・福祉関係のルポライター)

 

今月、娘は満2歳の誕生日を迎えた。誕生日に、田舎の母から宅急便が届いた。中を開けると、庭の畑でとれた野菜と、娘にと縫ってくれた洋服が入っている。手にとりながら、母の縫った服を着ていた小学生の頃を思い出した。そして、母を傷つけたことも。

当時、わたしは母が縫ってくれる服が、あまり好きではなかった。どれもちょっと時代遅れというか、いわば少女趣味で、ミニのキュロットやトレーナーなど、カジュアルでおしゃれな既製服を着た同級生の女の子のなかで、わたしの服装はかなり浮いていた。ただでさえ、外国から帰国した転校生だったので、服装でさらに浮くのは嫌だった。

だから、母に12歳の誕生日プレゼントになにがほしいか聞かれたときは、即座に「服」と答えた。縫うつもりで「ワンピース?」と笑顔で聞く母に、「ママが縫ったのじゃないよ。売ってるのがいいのっ」と、キツイ口調で言ったことを覚えている。

かくして、さいか屋(神奈川県のデパート)で、私はロゴ入りのトレーナーと当時はやっていた7分丈のズボンを買ってもらい、しばらくの間、それはお気に入りの服になった。母はそんなわたしを見て、少しずつ既製服を買うようになり、中学生の頃には、母の縫った服はほとんど着なくなった。母が「この生地の色、しづちゃんにすごく似合うと思って買っちゃった。なに、縫ってほしい?」と聞かれても、「いいよぉ。それよりジージャン買って」と言った。

今、孫娘の服を縫う母は70歳になる。送ってくれた服は、やはり時代遅れというか、昭和の雰囲気が漂っている。でも、いいのだ。この服を着た娘の写真とビデオを、すぐに母に送ってあげよう。春に実家に帰省するときは、この服を持っていこう。それによって、かつて、母を傷つけていた罪ほろぼしが、少しでもできる気がする。

 

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