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子育てエッセイ

伊豆稲取駅での出逢い

ときめきエッセイ 第115

伊豆稲取駅での出逢い

浅田志津子(教育・福祉関係のルポライター・詩人)

 

  8月上旬、伊豆に帰省した。今回の帰省で、私は初めて「ネットで知り合った方と直接会う」という体験をした。根っからのアナログ人間でネット自体をあまりやらないので、ネットを介した出会いは恥ずかしながら未経験だった。
    Iさんは、ブログ「伊豆稲取便り」の管理人で、毎日のように伊豆周辺の自然(山)を散策(ハイキング)し、そのさいのエピソードを味のある文章と写真や動画でUPしている。昨年の冬、友人が、伊豆急蓮台寺駅に常設展示されている拙詩「たたんだ千円札」の「書」について、このブログで取り上げていることを教えてくれ、早速訪れた。
    胸にしみいるような感想(評論)が、論理的かつ味わいのある文章によって綴られていた。うれしかった。友人知人ではなく、見知らぬ人が自発的に書いた感想こそ、社交辞令がない分、心にしみるものだ。一言お礼が言いたくてコメントしたら、すぐに御返事をくださり、それ以降、時々、Iさんのブログを訪れては、山の涼しさを味わってきた。

    6月に、伊豆急本社から連絡があった。春頃から検討中だった、拙詩「帰省」の「書」の常設展示場所が、伊豆稲取駅の待合室に決まったという。心底驚いた。Iさんの最寄り駅だからだ。確定後、Iさんに伝えたら、大変喜んでくださった。このあまりの偶然も、何かの縁かもしれないと思い、8月の帰省のさいに家族で伊豆稲取駅に立ち寄るので、そのさいにご挨拶できないか勇気を出して伺ったら、快諾してくださった。
    待ち合わせた日はあいにくの渋滞で、途中で私だけ車を降りて伊豆急に乗り、伊豆稲取駅で降りる。改札を出たところで、Iさんは奥様といっしょに、暑いなか私を待っていてくれた。
    3人で待合室に入り、まず、書を鑑賞する。自作の詩が書家による「書」になって、老若男女、さまざまな人々が利用する「駅」に常設展示されているさまを観るのは、ただただ感無量である。県立稲取高校の制服の女子高生が読んでくれていて、静かにうれしかった。
    Iさんご夫妻は上品で素敵な方々だった。私の両親と同じく、退職後に関東から伊豆に移住してきた方々で、Iさんは読書家で、ひとり旅(登山)が好き、奥様は手芸好きなところも、親に似ている。いろいろと話しながら、現在、入院中の父と、介護する母のことを思った。
    その後、Iさんのはからいで、稲取で唯一の書店、「山田書店」にて、詩画集「線路沿いの詩」を店頭販売してもらえることになった。今、我が家の和室には、Iさんの奥様手製の、折り紙の美しいつるし飾りが優しく揺れている。娘達はその真下で、マイクを手に歌って踊るのが大好きだ。人生初のネットをつうじての出会いは心温まるもので、勇気を出して、会うことを申し出てよかったなと思う。

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