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「ベビーシッター」を利用して 白川優子

子どもの傷、親の傷。 ~「ベビーシッター」を利用して(3)~

子どもの傷、親の傷。

~ベビーシッターを利用して(3)~

白川 優子(ライター)

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熱ばかり出していた子どもも一歳を迎えると、だいぶ体力がついてきたのか、保育園からの「お呼び出しコール」も減っていきました。成長はうれしいものの、ヨチヨチと危なっかしく歩き、好奇心旺盛な目の離せない時期になり、特に朝の支度時はいつもバタバタ。朝ごはんを食べる間もなく、メイクも中途半端なまま出かける、ゴミ出しの日なのに出せなかった・・・そんな余裕のない朝に、起こるべくして事件が起こってしまいました。

 

「ギャアアーーー!!」突然子どもの激しい叫び声。私も夫も、一瞬眼を放した瞬間でした。子どもの元へ駆けつけると、側にはアイロン。何が起こったのか瞬時にわかりました。子どもの手の届かない、奥まった場所に置いてあったはずのアイロン。赤ちゃんを卒業し、自由に動けるようになったわが子はいつの間にか、「手の届かないはずだった」場所にも行けるようになっていたのです。

指の付け根を2cmくらいの火傷でした。真っ青になりながら流水で冷やし、救急病院へ。「指だけで救急に来られても・・・」と、軽く軟膏を塗られただけで帰されました。冷静さに欠けていたのは確かですが、一歩間違えば大惨事だったかもしれない恐怖でガタガタと震えが止まりませんでした。例え小さな傷でも、自分が見ていなかったせいで熱く、痛い思いをさせてしまったことで、情けなく申し訳なく、子どもを抱きながら声を上げて泣きました。その後、近所にある皮膚科を数件訪ねたのですが、面積は小さいものの真皮まで達する火傷。返って来る言葉はどれも「少し痕は残るかもしれないけど、場所も目立たないしこれくらいですんでよかったですね。今度から気をつけてね」と、治療もそこそこ親の不注意を指摘されることが多く、落ち込むばかりでした。

 

「私が仕事していたせいで、こんなことになってしまった。」胸が痛くて、そんな自分より痛い思いをしている子どもがかわいそうで、「これくらいですんでよかった」などとは思えませんでした。どんなに小さい痕でも残したくない・・・インターネットで病院を調べていると、新しい方法で傷あとを残さないように治療してくれる病院を見つけました。家からは遠いですが、思いきって訪ねてみると、「痕を残さないように治しましょう。大丈夫、治るから、お母さんがんばりましょう」とそれまでとは違う言葉で励ます素晴らしいお医者さまでした。全国からも火傷の患者さんがたくさん来ているようでした。ただし、最初の2週間が肝心で、毎日通院する必要があるということで、ワーキングママである私には大きなハードルのように思えました。

家から病院まで片道1時間・・・仕事が終わってから家に戻り、通院するのは時間的に無理でした。

 

しかしそこからが、またもや頼もしいベビーシッターさんの出番でした。病院は、ちょうど家と職場の中間くらいのところにあったのですが、シッターさんは保育園に子どもを迎えに行き、そのまま電車に乗って病院の最寄り駅へ。そこで仕事帰りの私と待ち合わせをするという方法をとってくれたのです。

そのころは、電車の中でもグズったり騒いだりすることもあったのですが、シッターさんが上手に連れてきてくれるのか、改札口で待っているわが子はいつもご機嫌でした。私を見つけると、ニコっとして包帯を巻いた手を振ってくれました。その笑顔に会うたび、ホッとして泣きそうになりました。

 

この時のシッターさんには心から感謝しています。なぜなら、小さな手に巻かれた包帯、毎日の通院について、色々なことを私に聞かなかったからです。「痛そうですね」「かわいそうですね」「どれくらい深い火傷なんですか」等々、一言でも聞かれていたら、私はその場で泣き崩れてしまったでしょう。ただただ、「保育園のお迎え→病院最寄り駅まで送る」という役目をこなしてくださいました。「保育園ではこうだったようですよ」「電車の中ではこうでしたよ」等、たくさんの楽しいお話は、罪悪感と疲労感でいっぱいだった私の心にひと時の安らぎをくれました。

 

初期段階の毎日の通院のおかげで治療は順調に進みました。小さな子どものケガは、親の責任を問われることが多いですが、周囲の心ない一言で、親も胸をえぐられるように傷つきます。

会社の指導によるプロ意識なのか、シッターさん達の良識が素晴らしかったのかわかりませんが、この時の、子どもの傷も私の傷も、最小限にとどめてくださったことを、本当にありがたく思っています。

 

 

次回へ続く

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