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子育てエッセイ

留守番電話の声の主

2000年3月号

『留守番電話の声の主』 ベビーシッター 中島 昌子

先日、とてもうれしいことがありましたので、聴いていただきたくてペンを取りました。

シッティングを終えて帰宅する途中、自宅の留守番電話を聞いてみると、女の子の声で私宛のメッセージが入っていました。しかし、何度聴いても聴き取れません。自宅に戻ってからも何回も再生してみましたが、やっぱりわからず考え込んでいたちょうどそのとき、電話が鳴りました。出てみると、なんとその声の主。それは、私が5年ほど前にレギュラーで伺っていたお宅の女の子からのものでした。当時彼女は小学1~2年生。1年近くのシッティングの後、事情でほかの方に代わってもらうことになったのでした。

その後も何度か年賀状や暑中見舞いのやり取りをしていたのですが、お互いに引っ越したりした事情もあって、連絡が途絶えていたのです。時折、「どうしているのかな」と、思い出しはするものの、連絡もつかずそのままになっていました。

ただ、住所は変わっても自宅の電話番号は変わっていなかったので、彼女が勇気を出して電話をしてくれ、再びつながることができたというわけです。

それだけでもとてもうれしかったのですが、その後お手紙が届き、「中島さんは、いつまでも仲良しです。」「お返事をください」というメッセージも受け取りました。本当に心からうれしくて、早速私もお手紙を書きました。これからも、彼女とはいい関係で接していけたら幸せです。

ファミリー・サポートのシッターさんは心温かい人ばかりなので、きっと皆さん、同じようにすばらしい体験をたくさんお持ちだと思います。新しくベビーシッターになられる方にもこのような幸せな機会がいっぱいあることを祈ります。

また、私たちシッターとお客様とをつないでくださるスタッフの皆様に、いつもいつも感謝しています。おかげで私は、いつでもどこでも「ファミリー・サポート」を自信を持ってアピールできます。そのためにも、私自身、質の高いシッティング、愛情深いシッターを目指して、今後も努力していきたいと思います。

なんだかまとまりのない文になってしまいましたが、うれしさのあまりどうしても報告したかったので書かずにいられませんでした。風邪が流行している季節ですので、皆様も健康に気をつけられますように。

※20代後半になったシッターと、今はもう小学校6年か中学生になろうとしている一人っ子の女の子とのうれしい再会のお知らせでした。人間関係がぎくしゃくしている中で、「いつまでも心を開いて話せるお姉さん」と女の子の心の交流、読んだ私も思わずうれしくなってしまいました。(中舘)

ヤマンバと母性

2000年2月号

『ヤマンバと母性』 中舘 慈子

初めてヤマンバに逢ったときはちょっとびっくりしました。
ヤマンバ、もちろん後ろから見ると年齢不祥の白髪、前に回ると茶色の顔にキラキラメイク、おいらんのように高い靴をはいたあのお嬢さんたちのことです。

最近、東京女子大学教授林道義先生の「母性の復権」という本を読みました。
「1999年6月26日にテレビ朝日で放映された『放置!餓死!コギャルママ育児放棄』では、子どもを餓死させた20歳になるかならないかの母親数人にインタビューしていたが、全員が異口同音に『子どもの頃可愛いがられなかったので、どうして可愛がったらいいか分からない』『母としてよりも女として生きたい』と言っていたのが印象的であった。」
と、その中で述べています。

ヤマンバギャルが白髪をぼさぼさふりたてて、長いとがったつめで、泣き喚く赤ちゃんを扱いかねている様子を、いつかテレビで見た、パンダの母親が足元に寄ってくる毛の生えていない新生児を気味の悪い物体のように放置して立ち去った姿とダブらせて想像しました。

林先生は続けて、「母がおかしい。母が母でなくなっている。子どもを優しい気持ちでかわいがり,子どもの状態に気を配り無条件で守ると言う母の姿が、どんどん少なくなっている」「もっと深刻なのが、子どもを『分からない』と感じる母親である」と述べて、これらの現象を「母性が壊れている」という言葉で表しています。
ここまでくると、ヤマンバでなくても、恐らくかなりの母親の「母性が壊れている」ことになってしまうのではないでしょうか。

私は、初めて生まれたばかりの赤ちゃんを抱いたとき、やはり不安でした。「分からない」と思いました。悲しげに泣く我が子が何を訴えているのか分からなくて、悲しくさえなりました。

こんなとき、横でシッターさんや父親や母親の母が、「それは、おなかがすいているのだと思うから、お乳をあげて御覧なさい。」と、アドバイスすることで、母親はお乳を飲ませ、赤ちゃんを泣き止ませることができます。「おむつがぬれている」「暑すぎる」「かゆい」「ねむい」「甘えたい」……色々な原因があると思います。

人間の「母性」は本能として備わっていると言うよりも、形作られていくものだと思います。初めは「分からない」と思っても「分かろう」と努力を続けていけば良いのだと思います。シッターさんや、保育士さんだって研修や実習をするではありませんか。母親は「母性」が備わっているから、赤ちゃんの心がすぐに「分かる」はずというのは、少々乱暴な考え方だと思います。言葉なきメッセージを読み取るのに、学習や経験が必要なのが人間の子育てだと思います。それには、シッターさんや祖母の出番が必要なのです。

さて、さきほどのヤマンバギャル達ですが、「おちちをのませるなんてえ、かっこうわるくてえ、できないよねおむつとかあ、きたないしい…」「やっぱりい、おんなとしていきたいとかあ、おもうからあ…」

母親に可愛がられなかったと思っている彼女達は、母親のアドバイスに傾ける耳も持たないでしょう。シッターさんに頼もうという気持ちや条件がそろえば良いのですが…。

ヤマンバの「瀕死状態の母性」を「子どもって本当にかわいくて面白くて…」「ヤマンバよりもやさしいママになりたい」と、よみがえらせるのには、思い切ったこころの大手術が必要となりそうです。

バイリンガルベビー

2000年1月号

『バイリンガルベビー』  中舘 慈子

「5ヶ月の子どもに、1週間に1時間、英語を教えてくださる方はいませんか?
それも、ネイティブイングリッシュで話せる方を。教材もあるのですが、私がうまく使いこなせないので…。」
ある日、こんなお申し込みがありました。

まず、大人が怖い顔をして、「CAT!CAT!」と、ネイティブイングリッシュで赤ちゃんに教えている姿を想像しました。
…これでは、赤ちゃんは、「大きな顔が不愉快な声と怖い顔で迫ってくる。なんだか知らないけれど、悲しくなってきた…」と、泣き出すにちがいありません。

5ヶ月の赤ちゃんを思い浮かべてみてください。ほっぺたがふっくらとしてきて、ちょっとあやすとコロコロ笑うようになり、手足をパタパタ動かしながらわけのわからない声を出します。

「ウックンウックン」とか「ウーウーアーアーマーマー」「キャー…」といったように。これが、言葉にならない赤ちゃんの声、喃語です。英語ともフランス語とも中国語ともわからない不思議な発音ですね。
「よし、ここでバイリンガルベビーにしよう!」というお母様の張り切り様もわかるのですが…。
語学の力を伸ばすために一番大切なことは何だと思いますか?
それは、「人と話したい」「人と知り合いたい」「人とコミュニケーションをとることが楽しい」という気持ちそのものなのです。
この時期にそんなお子様の可能性をつぶさないようにしたいと思います。
子どもは笑顔で話しかけられたり、優しい歌声を聞いたりすることで、人の声を「快い」と感じるでしょう。働きかける大人自身が「赤ちゃんといることが楽しい。幸せだ。」と、思っているかどうか、赤ちゃんにはよくわかるかもしれません。こういう素地さえできていれば、20歳を過ぎて「どうしてもフランスに行きたい!!」と思えばフランス語を、短い期間に流暢に話すことができるようにさえなるのです。そのまま子どもがフランスに行ってしまい、寂しい思いをしている人を知っていますが…。
先ほどのお母様には「お子様が語学を習得するのにプラスになるような環境をご用意することならできますが、どういたしましょうか。」とご相談しました。
もちろん、お母様は快くこの条件を理解してくださいました。